合同会社Gencone

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進化など論外、合言葉はひとつだけ

目次

Ramones / S.T.

1976年作品

収録曲:A面

①Blitzkrieg Bop
②Beat On The Brat
③Judy Is A Punk
④I Wanna Be Your Boyfriend
⑤Chain Saw
⑥Now I Wanna Sniff Some Glue
⑦I Don’t Wanna Go Down To The Basement

B面

⑧Loudmouth
⑨Havana Affair
⑩Listen To My Heart
⑪53rd & 3rd
⑫Let’s Dance
⑬I Don’t Wanna Walk Around With You
⑭Today Your Love, Tomorrow The World

ヘイ、ホー、レッツゴー!ヘイ、ホー、レッツゴー!!
 
最初に、断っておく。
ラモーンズは、偉大なバンド。
音楽史としても、ニューヨーク・パンクの草分け的な存在だし。
超偉大。
スーパー偉大。
これは決して、揺るがないのよ。
是非、覚えておいておくれ。
でも、偉大なバンドだからって音楽まで偉大か、については。
ここではっきりと、それは違う、と言いたい。
「偉大なバンド=偉大な音楽」の方程式は、必ずしも成り立たないってことなのさ。

針を、落とす(もしくは、再生ボタンを押す)。

なんだ、これ。
モコモコした轟音、ビートの塊、とにかく走り出したことだけは、少なくとも分かる。
走り出した?
そうか?
なんか、モタついてない?
リズム、ガッタガタじゃない?
特に、ドラム。
ベース、単音すぎない?
つーかギター、ダウンストロークだけやん。
展開もクソもないやん。
それよりボーカル、腹から声出てなくない?
なんか、カスッカスじゃん!

と、感じたあなた。
OK。
君は正しい。
ただ、気をつけてくれ。
そんなツッコミを入れている間に、そんなに無い代表曲のひとつ(失礼!)①が、終わる。
だってしょうがないじゃん、全14曲、計29分。
てことは1曲平均、約2分なんだからさ。

そして、すぐさま始まる②。
なにこれ、さっきの曲と一緒じゃん!
OK。
君は正しい。
でもさ。
はい、そうですけど何か問題でも?
それって、そんなに罪深いっすか?
同じもの、ひとつのことしか出来ないって、そんなにいけないことっすか?

これがね、今夜の主役ラモーンズなんですよ(朝や昼にこれをご覧になってるみなさま、すいません)。
ひたすら、前に、前に。
歩いてるとか、走ってるとかじゃないのよ。
馬鹿みたいに、ただ前のめりなの。
前傾姿勢しか、取れないの。
がむしゃらなの。
だから、大音響なの。
爆音なのよ。
しかも、3コードと8ビート。
ただの、3コードと8ビートじゃないよ?
史上最強の、3コードと8ビートよ?
最高、じゃなくって、最強。
その美徳をね、もうなーんにも残ってないってくらいに、シンプルに削ぎ落していくのよ。
 
なんつーの、例えばさ。
ゼットソードも折れちゃう宇宙一硬い金属、カッチン鋼。
あれでガッチガチに固めたハンドルが、付いてる車があるとするじゃん。
それみたいな感じ。
ハンドルが固定されてるから、真っ直ぐしか進めないのよ。
他に、選択肢ないのよ。
そういうバンドなのよ、こいつら。
なんか、すいません分かりにくくて。
ドラゴンボールも、好きすぎて。
1974年、ニューヨークでラモーンズは結成されます。

そして2年後の1976年に、今作でデビュー。
以来、解散する1996年まで、ずっとこれよ。
ずーっと、これですよ。
約2分という、瞬間芸。
誰もやらなかった(やれなかった?)、約2分の永遠の周回。
勿論、20年もバンドやってりゃ若干のマイナー・チェンジはありましたともさ。
バックに、オーケストラ付けたりとか(笑)。
けど、そんなのは枝葉。
所詮、枝葉なんよ。
根幹にあるものは、不変というアティテュードだったわけです。

そして、もうひとつ。
ジミヘンも、ジャニス・ジョプリンも、ジム・モリソンもこの世を去った1970年代当時、ロックは随分と複雑化の一途を辿ったわけで。
勿論それによって、ロックはやっぱりアートなんだって。
結果、クオリティの高いたくさんの名盤が生まれました。
でもそれは、なんて言うのかな。
ありがたいもの、になっちゃったっていうかね。
聴き手に、ある種の受け身を強いるようなものでもあったわけで。
ギター・ソロには必ず、スーパー・テクニックが付きもので。
録音機材は、到底手が出せない高価な代物で。
昨日今日、ギターを手にしたキッズ達。
昨日今日、ロック・バンドを結成したキッズ達には、とんでもない高さのハードルにもなってしまったんだよね。

そこによ。
真打ちが、登場するわけよ。
下手くその、何が悪い。
未熟者は、ステージに立ったらダメなんてルールがあんのか?
とでも言いたいように。
ラモーンズこそが、昨日今日ギターを手にしたキッズ達。
昨日今日に、バンドを結成したキッズ達そのものだったわけです。
かっこいいぜ!

だってね、有名なあの逸話あるじゃん。
いろいろあるじゃん。

愛すべき名言たち

他のバンドをコピーしようにも下手くそで出来なかったら、オリジナルをプレイするしかなかったのさ(ジョニー・ラモーン:ギター)

言いたいねえ!
言ってみたいねえ、こんなエピソード!

 

「どうしてギターソロがないの?」って訊かれた時なんか、こうよ。

そんな暇はねえ!

せっかち君なのよ。
カップラーメン、3分待てないんよ。
バリカタよ、人生とはバリカタ。
バリカタしか、愛せないのよ。
でもこの一言に、この返しに、ジョニーの全てが詰まってんのよ。

 

更には、「どうして大音響でプレイするの?」って訊かれた時も。

好きだから。それだけだよ。どうしてそんな質問するんだい?俺は、感情に素直なだけなんだ(ジョーイ・ラモーン:ボーカル)

言いたいねえー!
パンクとは何か?にも同時に答えてるみたいだぜ、こんちくしょう!

ロンドン・パンクとの繋がり、その影響

ところで、あまり音楽やパンクを知らない人達からすれば、一般的にはパンクってロンドンのイメージなんじゃないでしょうか。
大半の人が思い浮かべるのはロンドン・パンクの双璧、セックス・ピストルズとザ・クラッシュ、みたいな。
バンド名も、インパクト大だし。
うるさくて速くて暴動的で、細身で革ジャンでツンツン頭で、なイメージ。
それは多分、夭折したピストルズのベーシスト、シド・ヴィシャスがわかりやすいアイコンとして知られてるからってのもあるのかなと。
でもね、違うんですよ。
ピストルズもクラッシュも、ラモーンズが居なかったら生まれてなかったんだぜ。

セックス・ピストルズ

ザ・クラッシュ

ラモーンズがイギリスでライヴをした時、客席にまだ素人同然のジョニー・ロットン(ピストルズ)とジョー・ストラマー(クラッシュ)が見に来ていたのは有名な話。
この時、ロットンはラモーンズをギャングだと思い込んでいたらしく(?)ビビり散らかし、ストラマーはライヴ後に興奮して楽屋を訪問、うら若き悩み事を相談したのだ。
 
 
ストラマー「自分もロック・バンドをやってんですけど、まだ下手くそで・・・ゴニョゴニョ」
 
返って来たのは、背筋ピーン!稲妻ズガーン!のこの言葉。
 
ジョーイ「馬鹿野郎!下手くそで何が悪い!俺たちはパンクやってんだよ!音楽じゃねえんだ。上手くなるまで待ってたら、ヨボヨボのジジイになって演奏なんかできねえよ!
 
 
これぞ、ジョーイ・ラモーンですよ。
そしてこの出会いとジョーイの言葉が、ロンドン・パンク・ムーブメント誕生のきっかけになったと思うと・・・あー、感慨深い。

進化など論外、合言葉はひとつだけ

ピストルズはアルバム1枚で解散だからあれとしても、クラッシュもザ・ジャム(ポール・ウェラー率いるロンドン・パンクの代表格)も、アルバムを作る度に進化して変化していくことになるわけで。
イギリス特有の捻くれた攻撃的なポップネスと、メッセージ性の強い歌詞を武器に。
そうやって作られたアルバムは、どれも名盤だしね。
当然、時代背景もあるし。
それはイギリスのお家芸でもある「経済的不況」をきっかけに、レゲエやラスタの運動とも連動していく。
存在理由がもっと死活問題で、肉体的で暴力的だったわけです。
でもそれは同時に、活動期間の短さとメンバー間の不協和音も生むことになります。
 
一方のラモーンズは、不変。
ただただ、不変。
「継続こそは力なり」とでも言いたげに、僅か2分の瞬間芸という、金太郎飴状態の楽曲とパフォーマンスで、パンク・バンドとしては世界的にも異例の20年以上も走り続けるわけですよ。
音の羅列を、短く強烈なエネルギーでプレイする。
でも不思議な、可愛らしい皮肉とユーモアで包まれている。
これは、決して矛盾しないんだな。
ロックンロールの進化って、実は退化なんじゃないか?って疑問が出ちゃうくらいに。
「ワン、ツー、スリー、フォー」のドラム・カウント。
「ヘイ、ホー、レッツゴー」の合言葉。
それだけあれば、もうかっこいいんだぜって。
 
よくあるじゃん、サッカー選手なんかでもさ、ゲームでその選手のパラメータが五角形とかで表示されるやつ。
技術、スタミナ、スピード、ディフェンス、サッカーIQとか。
どの数値も高い選手が総合値も高い、みたいな。
勿論、凄いことなんだけどさ。
しゃらくせえ。
俺達が出来ることなんて、ひとつだけ。
パンクかどうかってことだよ!
それが、ラモーンズなのさ。
ギターソロ?なんだそれ知らん。
歌唱力?そんなもん要らん。
ド下手バンド?なんだよそれ、最高の称号じゃん!

とかってまるで猪突猛進馬鹿みたいに書いてきたけど(笑)、オーソドックスなロックも勿論出来ちゃうのよ?
④とか。
甘酸っぱくて、くすぐったくて、サーフでしょ?
ヘヴィネス一辺倒だけじゃない、ポップ・センスもあって、どっか抜けててトンマっぽいのもまた魅力。
瞬間芸の中にも、様々なバリエーションがちゃんとあった。
音楽が持つ普遍性が、しっかりとあったんです。
稚拙な技量で勢いだけでやっているように見せかけて、実はしっかりと計算されたサウンドとアレンジ。
オールド・ロックのA to Zを、ちゃんと熟知していた。
単にハチャメチャなんじゃなくって、過去の遺産、とりわけ1960年代がビートが息づいているんだよね。
チンピラみたいなロック・スターって、古今東西みんな頭が良いんだよなぁ。
見せ方と、魅せ方をちゃんと理解している。
それは、ラモーンズもまた然りだったんです。

余談

こぼれ話

ここで遅ればせながら、メンバー紹介。
今作のジャケでいうと左から、ジョニー、ディー・ディー、ジョーイ、トミー。
何がおもしろいかって、全員がラモーン姓を名乗ってること。
これは別に兄弟とか親戚だからとかは全く関係なく、ちょっとしたノリやジョークだったらしい。
敬愛するビートルズのポール・マッカートニーが、デビュー前に「ポール・ラモーン」って名乗っていたところから拝借したとか。

※ビートルズについては、こちらもどうぞ

あとはね、やっぱあのファッションだよね。
くったくたの革ジャンに破れたジーンズ、スニーカー。
この統一感ていうか、トレードマークも20年間変わらなかった。
最近は、街でもあまり見かけなくなったな、このファッション。
以前は、あの人絶対ラモーンズ好きだよなぁなんて、よくあったけど。
このコテコテ感もまた、可愛らしくてかっこいいところ。
当然、名前もファッションも考え抜かれたコンセプトではあるわけだけど、それも曲の良さがあってこそだしね。

使用楽器

ジョニーは、中古で¥5,000で買ったボロボロのギターを長い間使用。
しかもギターケースがないから、紙袋に入れてたらしい。
どんな紙袋やねん(笑)。
破れちゃったりしないんかな(笑)。
このギターこそが生涯の相棒、モズライト。
理由は単純に、安かったから(笑)。
何度も言わせるなよ、これがパンク。
シンプル・イズ・パンク。
モデルは、ベンチャーズ・モデルⅡ。

ディー・ディーも活動を通じて1本のみ、フェンダー・プレシジョン・ベース。

最後に

今作の冒頭①、これがパンク・ロックの原点のひとつにすることに、異論のある人はいないんじゃないかな。
カウントを合図に3コードと8ビートのロックンロールを、ワイルドかつスピーディーに、矢継ぎ早にひたすら繰り出していく。
前述したファッションも含めて、そのライヴ・スタイルこそがパンク・ミュージックの基本を確立したのでありました。
ポップなメロディに(当時としては)ハードなサウンド、皮肉とユーモアに満ちた歌詞も、先駆者そのもの。
今作を聴いて、どれだけのキッズ達がバンドを始めたんだろう。
ギターなんて触ったことないけど、自分もやってみたいって思ったキッズ達が。
それは演奏が簡単そうで、自分でも出来そうって思ったからってのもあるかもしれないけど、そんなことよりもさ。
単純に、プレイしたら楽しそうだなって思ったからじゃないかな。
うまく言葉なんかじゃ説明できない、自分の中にあるモヤモヤした鬱屈とした何かを、昇華して爆発させられそうっていうかね。
絶対に飽きない遊びを、教えてくれたような。
これだけでも、偉大。
ヒット曲は決して多くはないけど、誰からも愛された。
「偉大なバンド=偉大な音楽」の方程式は成り立たなくても、ラモーンズと出会ってバンドに目覚めたキッズ達の数はもはや計測不能。
現在のポップ・パンクと呼ばれる全ての源流が、ここにあるといえます。

 

ニューヨークやロンドン問わず、ラモーンズ以外のかっこいいパンク・バンド、まだまだたくさんいるので。
またどこかで、書きたいと思います。

今回も最後まで読んでいたただいて、ありがとうございました。
それではまた、次の名盤・名曲で。

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この記事を書いた人
Kazuki
Kazuki

合同会社Gencone GANNON運営代表

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