合同会社Gencone

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墜落する筈だった飛行船は、ロック史上最高到達点に達したのさ。

目次

Led Zeppelin/S.T.

1969年作品

収録曲:A面

①Good Times Bad Times
②Babe I’m Gonna Leave You
③You Shock Me
④Dazed And Confused(幻惑されて)

収録曲:B面

⑤You Time Is Gonna Come(時が来たりて)
⑥Black Mountain Side
⑦Communication Breakdown
⑧I Can’t Quit You Baby(君から離れられない)
⑨How Many More Times
前回、レイジのデビュー作品について書くにあたって久しぶりに聴いてたんだけど。
やっぱりどちゃくそにかっこいいね、レイジは。
ギター・リフとフレーズに、隙がないもん。
これは、確かにレッド・ツェッペリン(以下、ZEP)に例えられるなぁと改めて感じたのもあって。
今回は、ZEPです。
 
良く言われるのが、「史上最高のハード・ロック・バンド」、「ヘヴィ・メタルの元祖」、他にもこういう類の代名詞は数知れず。
勿論、全くの間違いだなんて思ってませんよ。
思ってませんけど、でもさ。
違うじゃない、そんな狭い枠の中に押し込めて許される存在では、ないじゃない。
寧ろ、不幸よ?
ZEPにとっても、我々音楽リスナーにとってもさ。
 
何かさっきから同じようなことを繰り返してるけど、「大好きなバンドは?」って訊かれたらたくさんいるから答えに困るけれど。
「ロック史上、1番偉大なバンドは?」って訊かれたら。
 
ZEP。
ぶっちぎりで、ZEPですよ。
楽曲の幅と奥行き、ヴィジュアル、技術、影響力、セールス、完成度。
そのどれもが、破格。
その偉大なる第一歩を刻んだ大名盤、それが今作です。

結成から、今作の誕生まで

まずは、メンバー紹介を。

ギター、ジミー・ペイジ。
必殺ギター・リフ製造マシーンにして、バンドの発起人でリーダー、プロデューサー。
エリック・クラプトン、ジェフ・ベックが歴代ギタリストを務めた伝説的ブルース・ロック・バンド、ヤードバーズの最後のギタリストでもあったペイジは、その経歴もあってそこそこ名が売れていた。

そんな彼が新バンドの構想をしながら、当時まだ無名だったボーカリスト、ロバート・プラントに声をかけます。
その誘い文句は、「一緒に金儲けしようぜ」だったらしい。
うん、シンプルで良い。
金儲け、なんて言うほど簡単じゃないよ?
バンドが売れるには、ヒット曲の量産が不可欠だし。
ヒット曲を出すためには、人気もなくちゃならないし。
確信があったんだろうね、プロデューサーとして。
勿論、カントリー・ブルースやトラッド・フォーク等を聴き込んでいたプラントのパワフルな声と独特の歌唱スタイルが、ペイジのギターワークと見事にマッチしたことが最大の理由。

そしてプラントの推薦でやって来た、ジェイムス・ブラウン好きなドラマー、ジョン・ボーナム(以下、ボンゾ)。
後にロック史上最高のドラマーと呼ばれるようになるこの男も、当時はまだ無名。

最後に、ペイジと同じくセッション・ミュージシャンで技量も折り紙付きのベーシスト兼キーボーディスト、ジョン・ポール・ジョーンズ(以下、ジョンジー)。
ポップスやモータウン、果ては教会音楽まで造詣が深く、ミュージシャンとしてストーンズやドノヴァン等の数々のヒット曲に貢献した男。
その多才な音楽性と技術力は、ペイジにとってはまさに理想的なパートナーだった。

こうして遂に、最強の4人が揃います。
最初のリハーサルではヤードバーズや、後にエアロスミスもカヴァーするブルースの定番曲「トレイン・ケプト・ア・ローリン」をプレイ。
ジョンジーは「このバンドが偉大な存在になることを確信した」と回想してます。
メンバーが揃って直ぐにチームとしてロックすることと、ケミストリーの完璧さ。
今後のZEPの軌跡を、予言してるかのようだね。

そして、「ニュー・ヤードバーズ」だったバンド名を「レッド・ツェッペリン」に改名します。

この名前は、音楽仲間でもあったザ・フーのキース・ムーンが「このバンドは鉛の飛行船のように墜落するだろう」と発言したことに由来してるらしい(所説あり)。
そう、世界一有名な鉛の飛行船。
今作の、ジャケットですよ。
重さと軽さ、可燃性と優雅さ。
イマジネーションを刺激してきやがるぜ。

そしてペイジのプロデュースのもと、今作は急ピッチで制作されます。
1968年10月にロンドンのオリンピック・スタジオで行われたレコーディングは、わずか36時間(!)で完了。
4人の多様な音楽性を反映し、ブルース、フォーク、サイケデリック、ロックンロールが融合した革新的なサウンドが特徴となってます。
初めてこのレコードを手にした時さ、禍々しいジャケと、これが噂に聞くZEPかぁってので、おおー!って訳もなく感動したの覚えてるもん。

楽曲解説

まずは、アルバムのオープニングトラックであり、シングル曲の①
インパクト、強烈。
2007年の再結成ライヴでも、オープニングは勿論これ。
いきなりボンゾのパフォーマンスが際立ち、ペイジのリフとプラントのボーカルががっちりスクラム。
「書いた楽曲の中でも、最もリフが難しいもののひとつ」とジョンジーが語る1曲です。

同じくシングル⑦もそうだけど、練りに練ってコンパクトに纏めた手腕とアイディアが伝わってくる、名刺代わりのナンバー。
⑦はパンク・ロックの元祖とも言える、アグレッシブで簡潔な構成とキャッチ―なコーラスが潔い。

ペイジのギター・テクニックの多様性が発揮される②、いやらしくべっちょりした質感がたまらない③⑧はカヴァー曲。
⑧は共にウィリー・ディクソンのブルース・ナンバーで、⑧はオーティス・ラッシュが歌うバージョンも素晴らしく名演。
ここでは、プラントのボーカルとペイジのギターが感情的に絡み合い、伝統に則りつつ別次元へと見事に昇華してます。

そして個人的に今作のハイライト、サイケデリックに変幻的に展開していく④。
静と動、光と影の対比というペイジの十八番です。
この形が最も有名な形で完成された楽曲が、後に発表される4thアルバム「Ⅳ」収録の「天国への階段」といえるでしょう。
ペイジのバイオリンボウを使ったギター・テクニックは、ライヴでもお馴染み。

アルバムの最後を飾る⑨は、8分28秒の大作。
様々な曲のフレーズを断片的に組み合わせるという手法が、最後までこちら側を飽きさせない。
実験的なポテンシャルを、これでもかと聴かせてくれます。

A面・B面の全体の流れ、構成も完璧で、⑧から⑨に引き継がれていくとこなんて、いつ聴いてもドキドキするもんなぁ。
稀有な才能を持った4人が奇跡的に集まって、それぞれが高め合ってモンスター・バンドへと化けていく。
本人たちがどう思っているかは分からないけど、奇跡と呼ぶしかない出会いで結成されたバンドは、確かに存在する。
ロックンロール界の、巨人たち。
それは、ZEPもまた然り。
今作は、その最初の巨大な一歩を記録した、「ロック史上に輝く1枚」と語ることしか出来ないアルバムです。

影響と、その後のZEP

コンサートやライヴという場所において、それまでのロックを「ハード&ヘヴィ」という次なるフェーズに一気に押し上げたのは、間違いなくZEP。
これだけでも偉大な功績なのに、アルバムというスタジオ作品では多方面の音楽要素を呑み込んで、よりロックを芳醇な音楽へと変貌させたのも、間違いなくZEPだった。

ブルースを基調にした大音量で叩きつける3人のパワフルな演奏と、それと互角に渡り合うプラントのボーカル。
ね、前回のレイジが、もろに影響を受けてるのが分かるよね。

前述したように、「ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの元祖」と呼ばれるけど、実際に額面通りのハード・ロックを制作してプレイしたのは、2ndアルバム「Ⅱ」までと言われてます。
3rd以降は、意識的にその音楽性を変化させていく。
天才的プロデューサーのペイジが、フレージングとリズム認識に新たなメスを入れていくわけ。
単調なリフを延々と繰り返して、音の壁を作っていくような作風が聴けます。

1969年の今作に始まって、1976年の7thアルバム「プレゼンス」まで(この間たったの7年!嘘だろ!!)70年代を一気に駆け抜けた疾走感は今振り返っても圧巻だし、まずはその天よりも高いテンションに、音楽好きなら誰もが触れておく必要があるんじゃないかな。

ここからは少し端折るけど、ZEPは1980年に解散を迎えます。
理由は、ボンゾの急死。
ZEPくらいの頂点バンドなら、代わりはいくらでも見つかるじゃん、って思うよね。
実際、ストーンズもザ・フーも代わりのドラマーを入れて、活動を続けてるし。
でも、ZEPは迷うことなく解散した。
単純に、ボンゾなしではもう音楽が出来ないから。
成り立たないから。
ペイジの音楽的冒険を後押しして、時には先導も出来たドラマーは、後にも先にもこの世界では、ボンゾしか居なかったから。
ボンゾが、死んだ。
じゃあ、もう無理だね。
メンバーだけじゃなく、ファンも納得してしまったこの事実こそが、よりZEPの偉大さを物語ってます。

あとは、ジミー・ペイジ=ギブソン・レスポールのイメージの確立。
ロック好きやギタリストの間では、もはや常識です。
代表曲「天国への階段」で使用されたギブソン・EDS-1275(ダブルネックのギター)やアコースティック・ギターもよく映像で見るけれど、やっぱりペイジと言ったらレスポール。
このイメージの確立、アイコンというだけでも影響力は絶大。
問答無用でかっこいいもんね、ザ・ギタリストって感じで。
特に70年代中盤のさ、ドラゴンスーツとの相性ですよ。
この頃は、スタイルも良いし(失礼しました)。

それから、腰より低い位置で弾くってやつ。
これ、みんな一度は真似したんじゃないかな。
で、弾きにくい笑。
エアロスミスのジョー・ペリー、ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュ等、現在もみーんな真似してるもんね。

なんだけど、実は今作や初期ではフェンダー・テレキャスターを使用。
次項で解説します。

余談

使用楽器

・フェンダー・テレキャスター(1959年製)

1966年のヤードバーズ時代に、ジェフ・ベックから譲り受けた(!)もの。
8枚の丸型ミラーをボディに貼り付け、光を反射させて神秘的なイメージを醸し出そうとしたとか。
正直、凡人にはわかりませんこのセンス笑。

その後ミラーを取り外し(やっぱり!笑)、自らサイケデリックなドラゴンのデザインを塗装。
今作のレコーディングでも、大いに活躍することになります。

最後に

いかがでしたか。
その後のZEPの歩みの全てが予告され、同時に1970年代ロックの大いなる可能性が宣言された、恐るべき今作は。
全編にみなぎるこのデリカシーと、極度の美意識。
ZEPのサウンドは、当初から各メンバーの多様な音楽的嗜好の衝突と融合の中で練り上げられたものなんだけど、摩訶不思議な深みと闇を孕んだもはやフュージョンが、同時に前例のないテンションと強度をも誇るっていう、文字通り前代未聞だったわけで。

全アルバムについて書きたいくらいに言葉が足りないので、いつかまた書きますが。
レゲエやオリエンタル・メロディすらも導入していく多彩な歩みを、是非聴いてみてください。

こんなロック・バンドは、絶対に未来永劫出てこないよ。
断言しちゃうぜ。

今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
それではまた、次の名盤・名曲で。

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Kazuki

合同会社Gencone GANNON運営代表