合同会社Gencone

台無しになった誕生日ケーキ。欲しいものが、いつでも手に入るわけじゃないんだ。

目次

The Rolling Stones/Let It Bleed

1969年作品

収録曲:A面

①Gimme Shelter
②Love In Vain(むなしき愛)
③Country Honk
④Live With Me
⑤Let It Bleed

収録曲:B面

⑥Midnight Rambler
⑦You Got The Silver
⑧Monkey Man
⑨You Can’t Always Get What You Want(無情の世界)
やっぱり、ロックンロールを語るうえで避けては通れないよね。
ザ・ローリング・ストーンズ(以下、ストーンズ)と、ストーンズの代表作のひとつである今作は。
ビートルズと、ストーンズ。
どっちも偉大で素晴らしいんだけど、どちらかというとストーンズが好き。
勿論、ビートルズも大好きだけどね。
 
ビートルズについては、こちらもどうぞ

いろんな言い方があるし、毎回書いてるような気もするけど。
ビートルズは、20世紀最大の遺産。
レッド・ツェッペリンは、ロック史上最も偉大なバンド。
なら、ストーンズは?
ロック史上、最強のバンド。
最高、では決してない。
最強。
そんなストーンズの歴史は、1962年の結成から現在に至るまで(なんたって1度も解散してないからね!)、ざっくりと3つに分けられます。
ボーカルのミック・ジャガー(以下、ミック)、ギターのキース・リチャーズ(以下、キース)の幼馴染の2人が、現存するオリジナル・メンバー。
歴代もう一人ギタリストが常に居るんだけど、その変遷をこの記事では3つの期とします。
 
第1期(1962~69年)、ブライアン・ジョーンズ(以下、ブライアン)。
第2期(1969~74年)、ミック・テイラー(以下、テイラー。)
第3期(1975~現在)、ロン・ウッド(以下、ロニー)。
 
ストーンズ好きは面白いくらいに、好きな時期(誰がギタリストか)が分かれるんだよね。
年齢と共に、変わるしさ。
自分は以前は第2期だったけど、今は第1期かな。
スーツ着て、ゴリゴリとひたすらブルースやガレージ、R&Bを演ってたブライアンが居た頃。
また年齢を重ねると、変わったりもするんだろうな。
2000年初頭くらいのインタビューで、ミックが「ストーンズが一番良かった時期はテイラーが居た頃(第2期)じゃないかな」みたいなことを言ってました。
今作はその第2期に制作された、ストーンズの代表作にして大名盤です。

変革と挑戦、今作誕生まで

1968年は、ストーンズにとって変革と挑戦の年。

前年にリリースしたアルバム「サタニック・マジェスティーズ」のサイケデリックなアプローチから一転、彼らはよりブルースやロックンロールのルーツに立ち返る方向性を模索し始めました。
まず、泣く子も黙る代表曲「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のシングル発売。
イントロのリフ、ロック好きならみんな知ってるよね。
あの「ジャッジャー」こそがストーンズ!
ライヴのオープニングを飾ることも多いこの曲は、1966年作品の「アフターマス」から「サタニック・マジェスティーズ」までの、サイケに寄り始めてルーツであるブルースから最も遠ざかっていたストーンズの、高らかな原点回帰宣言。

それを誇示するかのようにチャートも全英1位を獲得、音楽的起源である黒人音楽に再び根ざしていく姿勢に、当時のファンは安心したとか。
それこそが、誰もが望んだ本来のストーンズだったんだな。

その勢いのまま1968年12月にリリースされたアルバムが、「ベガーズ・バンケット」。
まだビートルズに追従するイメージ、要はあくまで2番手のバンドだったストーンズが、独自の音楽性で自らの道を切り開き始めたの大名盤。
今作の、前作です。
「ベガーズ・バンケット」についても、いつか必ず!
そして現在に至るストーンズ・スタイルというべきオリジナルなサウンド・フォーマットを確立したのが、今作。
そう断言しても、異論を唱える人はいないんじゃないかなと思います。

楽曲解説

まずはアルバムのオープニングを飾る①、いきなり不穏。
当時の社会情勢や戦争に対する不安を反映した歌詞は、ストーンズなりの挽歌のよう。
ゲスト参加のメリー・クレイトンとの強力なデュエット・ボーカルが、一段と雰囲気を醸してます。

②は伝説中の伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンのナンバーで、もう敬愛し過ぎて満を持してカヴァー笑。
ミック・ジャガーのボーカルとライ・クーダーのマンドリンが、美しい調和を見せます。
明らかにキースに嫌われてるわ、ってライ・クーダーは感じてたらしいけど笑。
 
個人的には、ストーンズの全楽曲の中でもトップ5に入る③。
代表曲「ホンキー・トンク・ウィメン」のカントリー・バージョンです。
ザ・アメリカ南部!
ザ・スワンプ・ロック!なナンバーで、「~ウィメン」の方は、ライヴでも定番。
 
そしてこれまたライヴ定番曲④。
ファンキーなベースラインとブラスセクションが特徴で、バンドの新しい音楽的試みが見事にマッチ。
ストーンズはライヴ・アルバムもかなり発表してるけど、「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」、「シャイン・ア・ライト」に収録されたテイクがめちゃくちゃドライヴしまくり。
特に後者は、クリスティーナ・アギレラとのデュエット。
これぞロックンロール、これぞストーンズ!
ミックはR&B女性歌手とのデュエットが、本当に極上だよね。
①も、最近はレディー・ガガと演ってるし。

タイトル曲⑤を挟んで、今作のハイライトはやっぱりこれになるでしょう、な⑥。
ザックザクでひたすらに繰り返されるイントロのリフと、段々とテンポアップしていく展開に興奮必至。
くーっ、この緊張感ですよ。
ミックとキースがイタリア休暇中に作ったそうで、ストーンズしかプレイし得ないブルース・オペラ。
ストーンズの来日公演で毎回この曲を聴く為だけに、全公演のチケットを抑えたって甲本ヒロトが言ってました。
ちなみに筆者も、2014年の東京ドームで拝聴済み。
最高!

⑦は、キース初の全編ボーカル曲。
いぶし銀の歌声とスライド・ギターが、ジャック・ダニエルみたいにみぞおちに染み渡るぜ。
ライヴだとさ、ボーカルに専念する為なのかギター弾かないんだけど、代わりに咥え煙草。
これがまた、かっこいいんだよなぁ。

そしてエネルギッシュなロックンロール⑧に続いて、1960年代への鎮魂歌に相応しい、壮大なフィナーレ・ナンバー⑨。
スワンプ風味のコーラスに、ロンドン・バッハ合唱団の荘厳な歌声が重なって、「欲しいものがいつでも手に入るわけじゃないぜ」と歌うミックのボーカルがズドンと来る。

発売後から現在に至るまで、収録曲の全てをライヴで採り上げてることからも分かるように、ストーンズ自身も出来栄えに自信を漲らせる、まさに「捨て曲なし」の大名盤です。

影響と、その後のストーンズ

実は今作の制作中に、意見対立やドラッグ問題で初代リーダーのブライアンが脱退(事実上の解雇)。
後任として、テイラーが加入します。
その為、ブライアンが参加したのは⑥⑦、テイラーは③④に留まっています。
そして制作中に、謎の死を遂げたブライアンの訃報が届く。
それでもメンバーは制作を続け、今作が完成しました。
 
そのせいか、どこか悲しみを感じさせる半面、怒りや力強い意志のようなものがある。
 
うーん、何だろうなぁ。
盗みや、女遊びといった不良の悪事。
それだけじゃなくて、ルーツであるブルース談義や、ギターの知識と技術。
その全てを教えてくれた、少し年上の兄貴分。
 
ずっと一緒にやってきた仲間をクビにするってさ、やっぱり抵抗あるもんだよね。
気持ちの良いものでは、ないっていうか。
勿論仕事だからね、摩擦係数や機能性が大事だから。
部活動やスポーツでも、レギュラーとかメンバー選考から外す、あの感じ。
意地悪っつーか、ハブにする場面が起こってしまうのは、人間関係が存在する以上どこでも起こるわけで。
世代交代の意味も、あるだろうし。
それは、どんなに偉大なチームでも。
ロックンロール・バンドでも、同じ。
今作のタイトルは、「血を流せ」。
痛みや悲しみや、それによって導かれた結果や結論を、ハートにも身体にも刻んでいこうぜっていうことなんじゃないかな。
 
そして裏ジャケには、表ジャケでレコードの上にメンバーを模して綺麗に飾られたケーキの、成れの果て。
そう。
欲しいものがいつでも手に入るわけじゃ、ないんだよなぁ。
 
こうして新たなギタリストであるテイラーを迎えたストーンズは、前述のミックのインタビューの通り、ここからバンド最盛期へと突入していく。

余談

使用楽器

・Maton SE777(オーストラリア製)

この時期のキースのメインと言えば、ギブソン・レスポール・カスタム(1957年製)。
有名な1本で、通称「Black Beauty」と呼ばれるものです。
上記の「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の映像内でも確認できます。

そんな中、今作の全楽曲のレコーディングで使用したとされるのが、このMaton SE777。
レコーディングではレスポール・カスタムは勿論のこと、サンバーストのギブソンES-330、ギブソン・ファイヤーバードⅦ、ギブソン・ハミングバード等のそれまでのギターはどれも使用したらしいんだけど。

ある日、知らない誰かが家に泊まりに来て置いていったこれが、気に入ったらしい笑。
あ、基本的にキースの話はこんなんばっかりだから。
「泊めてくれたお礼に、大事に使ってくれよ!」ってメッセージなんだってさ笑。

ギター界ではマイナーなこのギターは、エレクトリック・ホロウボディー。
キースの愛が強すぎて酷使され(大事に使えよ)、①の最後のパートを弾いた瞬間に、フロント・ピックアップが壊れたというエピソードがあります。

最後に

勝手にライバル視してた(笑)ビートルズに触発されて、キャッチーなポップ・ソングを書き始めてヒットさせてきたミックとキースが、好きなブルースやR&Bの影響を避けることなく、自らのソング・ライティングと調和させる方向でオリジナルなロックンロールやカントリー・バラードを作ることで、新境地を切り開いた。
その現在に至るまでのストーンズっていうバンドの基本的な音楽性とカラーを確立したっていう功績では、今作以上の重要作品はないよね。
どっしりとした貫禄が、ジャケからも音からも伝わってくるもん。
ひとつひとつの音がとことん骨太で、それでいて一切の贅肉がない感じ。
全てが緊密に結び合って、「これしかない」ってな必然で鳴っている。
 
初めて聴いた時、それまでにあったどこか軽妙な感じに比べて、随分と渋い路線に行ったなぁって思ったけど、何回か聴くうちに、ビートルズとは明らかに違うもの。
もっと言えば、古き良きブリティッシュ・インヴェイジョンと一線を画す、アーシーでルーズな、それまでになかったタフさがあった。
あーこれがストーンズなんだなぁって、妙に納得した覚えがあります。
 
ストーンズはどれも名盤で、中でも前述した1968年作品「ベガーズ・バンケット」から1978年作品「女たち」まで、超ド級を連発しまくっていく。
なんだけど、完成度という意味では、間違いなく今作だと思います。
 
さらば、ブライアン。
縦縞のスーツ、かっこいいぜ。

今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
それではまた、次の名盤・名曲で。

\\  良かったらシェアしてください!  //
\\良かったらシェアしてください!//
Facebook
Twitter
LinkedIn
Email
この記事を書いた人
Picture of Kazuki
Kazuki

合同会社Gencone GANNON運営代表