知覚の扉が拭い改められる時、全てはありのままに現れて、無限に見える。
知覚の扉が拭い改められる時、全てはありのままに現れて、無限に見える。
目次
The Doors/S.T.(邦題:ハートに火をつけて)
1967年作品
27クラブ。
ロックンロールを聴き始めると、誰もが必ず出会うワード。
奇しくも27歳で亡くなってしまった、ロックスター達(他にも俳優や芸術家)を指す言葉です。
古くは伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソン。
そしてこの言葉が定着したのは、1969年から1971年にかけての僅かな期間でした。
このたった2年の間に、時代を象徴し現在に至るまで強烈な影響を与えているロックスター達が、4人も亡くなってしまったわけで。
まずは、ブライアン・ジョーンズ。
イギリスが生んだ、ロック史上最強のバンド、ローリング・ストーンズの初代リーダー。
※ブライアンについては、こちらもどうぞ
続いて、ジミ・ヘンドリックスとジャニス・
そして最後が、今回のブログで採り上げたジム・モリソンでした。
この3人は、みんな天才にして当時のアメリカン・ロックの頂点。
ならこの3人は、その辺の凡百のロックとは何が一線を画していたのか。
一言でいうと、ジミヘンはエレクトリック・ギターの革新者。
ジャニスは、魂を震わせるボーカリスト。
なら、ジム・
それは単なるロック・シンガーではなく、「詩人」であって「
今回は、そのジム・モリソンがフロントマンを務めたドアーズの、デビュー・アルバムについて書きたいと思います。
詩人と前衛音楽家の邂逅、ドアーズ結成
ジム・モリソン(以下、モリソン)の原点は音楽ではなく、文学と詩でした。
思想的作家っていうのかな。
その影響は、音楽活動を始める以前から詩作という形で才能が開花していきます。
その詩的感性は、
モリソンの詩には、
舞台の上でマイクを握る彼は、
そもそも、バンド名が「Doors」。
モリソンはいつかバンドを結成した時にと、この名前を既に考えてたんだけど。
扉の、向こう側とこちら側。
未知と既知というコンセプトを、主軸に置くという構想があった。
そんなモリソンの詩を読んで感銘を受けた、レイ・マンザレク(以下マンザレク、Key)がバンドの結成を持ちかけます。
マンザレクはモリソンと同じUCLA映画学科の学生で、音楽に造詣が深いだけでなく、マハリシ・ヨギの教義に傾倒する前衛的な人物でした。
夢と現実の狭間で聞こえた旋律を綴る詩人、モリソン。
クラシックやジャズにも通じた理知的な鍵盤奏者、マンザレク。
結成当初、モリソンが口遊んだのは、のちにバンドの方向性を指し示す「Moonlight Drive」(次作である2ndアルバムに収録)の”let’s swim to the moon”という一節でした。
この言葉には、ロックを詩の領域へ押し上げるパワーがある、と確信したマンザレク。
そしてこの2人が、ドアーズの中心となっていきます。
この感じ、ヴェルヴェッツに似てるよね。
西のロサンゼルス、東のニューヨーク。
※ヴェルヴェット・アンダーグラウンドについては、こちらをどうぞ
まだボーカリストとして未熟だったモリソンを、付きっきりでトレーニングしたり。
トレーラーハウスで暮らしてたモリソンを自分のアパートに住まわせたりと、マンザレクは公私共に支えます。
このマンザレクこそ、伝説的バンドとなるドアーズの陰の功労者。
そしてロビー・クリーガー(G)、ジョン・デンズモア(Dr)が加入して、ドアーズが誕生しました。
ベースレス・スタイルの大ヒット、一躍トップ・バンドへ
ところで、結成されたドアーズの楽器構成を見て、あれ?って思った方もいるでしょう。
4人組ロック・バンドの構成で、スタンダードといえば。
Vo、G、B、Dr。
ドアーズは、Vo、G、Key(オルガン)、Dr。
そう、ベースの代わりにオルガンなんだよね。
このベース不在という余白を、マンザレクの左手(Fender Rhodes Piano Bass)で埋めて、右手(Vox Continentalなど)でオルガン・トーンを鳴らす。
この流麗で沈殿していく独特のサウンドが、ドアーズのミニマルで催眠的な骨格となりました。
詩(言葉)と和音(鍵盤)の連結点にモリソンとマンザレクが位置し、2人の共鳴がバンド全体の音像を規定していく。
スタンダードなロック・バンドの黄金律とは異なる、サイケデリックな暗い輝き。
これこそ、ドアーズ!
そしてこの唯一無二のグルーヴで生まれた2ndシングル②の大ヒットで、バンドは一躍トップへ。
ブルースロックを基盤にしたバンドが、主軸に鍵盤を敢えて取り入れる。
グッと緊張感が生まれて、ハートを揺さぶってくるんだよね。
イギリスのバンド、アニマルズやアフィニティーもそう。
是非、チェックしてみてください。
収録曲:A面
①Break on Through (To the Other Side)
②Soul Kitchen
③Crystal Ships(水晶の舟)
④Twentieth Century Fox
⑤Whisky bar(Alabama Song)
⑥Light My Fire(ハートに火をつけて)
収録曲:B面
⑦Back Door Man
⑧I Looked At You(君を見つめて)
⑨End Of The Night
⑩Take It As It Comes(チャンスはつかめ)
⑪The End
楽曲解説
ここでは、今作を語る上で絶対に外せない3曲を解説します。
まずは、オープニング①。
最初の扉ですよ。
なんか、RPGの最初のステージみたい。
跳ねるビートに、モリソンは「向こう側へ突き抜けていけ」と強行呪文を繰り返し畳みかける。
この、強烈なアジテートですよ。
扉を蹴破る、衝動そのもの。
そしてマンザレクは、左手で拍の芯を刻みつつ、右手のオルガンでリスナーの視界をこじ開けていく。
まるで扉の門番、間口を数学的に設計していく。
執拗にリフレインされるコーラスの度に、壁や空といった境界線が割れて、扉の向こう側が鮮やかに出現する。
まさに、オープニングに相応しい1曲です。
プロモーション・ビデオの、モリソンの色気がとにかくムンムン!
そしてドアーズの代表曲にして、最大のヒット曲⑥。
これは意外にもロビー・クリーガーが作った曲で、しかも処女作。
生まれて初めて書いた曲がこれって、やっぱりドアーズはとんでもないメンバーで構成されたバンドだったんだなって、つくづく思わされるなー。
「それまで溜め込んでいた物を、今しかないっていうチャンスに全部吐き出してみた感じ」とは、ロビー・クリーガーの言葉。
歌詞をモリソンが補って、アレンジは全員でアイディアを出したこの曲こそが、ドアーズを一夜にしてトップへと押し上げました。
モリソンには、「彗星のようにいきなり駆け上がって大成功する」という計画があったので、正に有言実行。
ほぼ1テイクで録音されたこの曲は、まずは一度聴いたら忘れられない、イントロの鍵盤リフ。
そして、導火線に着火するかのようなボーカルと。
火が消えないように風向きを読みながらも、一度点いた火を炎に巨大化させていくような、インタープレイの応酬にサブイボ総立ち間違いなしです。
シングル盤では間奏がほとんどカットされたんだけど、アルバムではフル尺で聴けます。
そもそも、ライヴでの持ち時間の尺を埋める為の苦肉が策が、同じフレーズを繰り返すことだった。
これが功を奏して、時間の延長そのものが快楽に変わるっていうマジックが、結果的に生まれることに。
次で紹介するラストナンバー⑪もそうで、歌詞の展開に応じて演奏が組み立てられる、壮大で演劇的な曲へと大化けします。
ロックにおける集団即興の可塑性をメインストリームへ押し上げた、歴史的な1曲。
最後は、クライマックスに相応しい⑪。
未だにモリソンの真意が解明されていない、衝撃の問題作です。
この曲がその後のロック史に与えた影響は、計測不可。
たった1曲が立ち上げることの出来る、世界とスペース。
エディプスの神話を題材に、破壊衝動、母性と暴力を描く文学性。
そのいずれの点においても、発表から50年以上経った今でも、この曲と同じ地平に到達した楽曲って、他にないんじゃないかな。
「お父さん、俺はあなたを殺したい。お母さん、俺はあなたを・・」の歌詞。
自由と絶望が隣り合わせの荒野に降る、「終わり」。
10分を超える長尺の構成は、意味という概念が変性していく時間そのもの。
歌詞は勿論、呼吸も間合いも沈黙も、全てが完璧に音として鳴っています。
サイケデリック・ロックのカラフルなコーラスが花を咲かせていた当時、突然変異的に表れたドアーズのインパクトを、的確に物語った1曲です。
間違いなく、ロックの新しい扉をこじ開けたよなぁ。
ミッシェル・ガン・エレファントが解散ライヴのオープニングSEで流したのも、この曲。
「The End」で始まって、「世界の終わり」で終える。
完璧でした。
※ミッシェルについては、こちらをどうぞ
影響と遺産
最後に
「地獄の黙示録」と、「ドアーズ」
フランシス・フォード・コッポラが監督した、映画「地獄の黙示録」。
実は筆者は、この映画でドアーズを知りました。
ロックンロールを聴き始めると、同時に映画観賞にも興味が出て来るっていうのは、学生時代のあるあるかなと。
同じコッポラが監督した、映画史に燦然と輝く「ゴッドファーザー」シリーズを見て。
次に見たのが、「地獄の黙示録」。
主演も、同じマーロン・ブランドだったし。
この映画で、⑪が非常に効果的に使用されてるんです。
初めて字幕で歌詞を見た時、何だこれは?って。
それから、後になって知ってびっくりしたのが。
モリソンとコッポラが、UCLAの映画学科で同級生だったこと。
それもあって、とても思い入れのある映画です。
また、オリバー・ストーンが監督した、映画「ドアーズ」。
創作が入り過ぎて実像と違うとか、賛否両論あるんだけど。
これも、大好きな映画です。
とにかく、主演のヴァル・キルマーが生き写しかってくらいそっくり。
ドアーズに、ますますのめり込んでいったきっかけになりました。
このストーン監督の代表作「プラトーン」。
これは、「地獄の黙示録」同様にベトナム戦争を描いた映画です。
超大国アメリカの、正義と夢の裏側の現実とも言える、ベトナム戦争。
それを題材に映画を制作したコッポラは、劇中で⑪を効果的に印象深く使用。
ベトナムで従軍経験もあるストーンは、それを基にアメリカの暗部と真実を描く「プラトーン」を制作。
そんなストーンが、「プラトーン」「7月4日に生まれて」に続いて、1960年代のアメリカ社会三部作として制作したのが、この「ドアーズ」でした。
この繋がりを見ても、モリソンとドアーズが、ロックを通じて扉の向こう側へ。
社会通念や常識の枠組みを突き抜けて、あの向こう側へと導き続けた存在だったことが分かります。
あのイギー・ポップも、その儀式的な詩とサウンド、ライヴ・パフォーマンスから多大な影響を受けました。
※イギー・ポップについてはこちらもどうぞ
是非、この2作品の映画も見てみてください。
余談
あとはね、国内盤CDでは絶対に聴かないでください!
レコードや輸入盤、サブスクでどうぞ!
って言うのもね、現在流通してる盤は知らないけど。
当時は、日本盤だとボーナストラックが入ってるバージョンがあって。
勿論ボートラって文字通りボーナスだから、ありがたいんだけど。
レコードって、CDアルバムって、作品だから。
作った本人達の、想いが込められてる物だから。
今作のラスト曲は、⑪。
タイトルの如く、「The End」。
この衝撃と余韻の後に、ボートラが始まったらあかんやつじゃん。
ドアーズが⑪で終わり、これが締めって決めたんだからさ。
セールスの為のお得感とか、輸入盤との差別化とか。
レコード会社の立場も、分かるけど。
これは、流石にあかんやつですよ。
しかも、次作である2nd「Strange Days(邦題:まぼろしの世界)」でもそうだから。
ラスト曲は、⑩「When The Music’s Over(邦題:音楽が終わったら)」。
この曲名で、この曲以外に。
続く曲やラスト曲って、ある?
ないよね?(怒)。
なのでどうしてもボートラが聴きたいって方は、いや筆者だってファンとしては当然聴きたいんだけど、自分でプレイリスト作って、楽しんでください。
なんか、最後の最後で。
こんなこと言って、すいません。
失礼しました!
今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
それではまた、次の名盤・名曲で。
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この記事を書いた人
Kazuki
合同会社Gencone ナラセル運営代表
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